立石に行きたい。
なのに快速に乗ってしまい青砥まで止まらない。
前も同じあやまちをしたな。
それから戻ろうとしたのに、
路線を間違えてお花茶屋に来てしまい…。
ようやくの立石。
聖地への道は甘くないのだ。
並びますか。
16時34分。30分以上かかるようなら諦めよう。
あれ、けっこうお客さん出てくる。
意外と早く入れるかも。
あ、16時50分入店。並んだのわずか16分。
過去最速だ。
平日は開店前から並ぶより、
このくらいの時間がいいのかな。
宇ち多"といえば注文が難しいことで有名。
焼きかたとか味とかいろんなパターンがある。
「ガツ塩わか焼きで」とか。
しかも焼きもののメニューがない。
その上、食べようと決めてきたタン生が売り切れときたら、どうしていいかわからなく煮込み。
言うのがいちばん簡単だから。
それに梅割りね。
さすがの煮込みだなあ。
ドライな感じ。コクがあるのにキレがある。
これはなかなかほかにない味。
さあ、困ったぞ。次はなに頼もう。
隣の常連と思われるお客さんが最初に食べてたあれがいいな。
生っぽいやつ。うまそう。
なにより、ちがうのを一本ずつなのがいい。
ここ、ふつう同じの二本ずつだよね。
なにか特別なものだけ一本ずついけるんだろうか。
どうしよ。どうしよ。
お店の人に一本ずつできるのなんですか?とも聞けないし。
なんとなくね。
そのとき俺は勇気を出した。
隣のお客さんに聞いた。
「最初に食べられてたのなんですか?」
「レバのボイルとナンコツの生です」
やさしい。
やさしそうだったから聞いたってのもあるけど。
俺だってやればできる。
言われた通りに注文すると、同じものが来たよ。
これこれこれ。
ありがとう、常連さん。
ありがとう、お店の人。
梅割りもう一杯追加。
これこそ、この店らしいやつだよね。
でかいよ。
ナンコツはバリバリしてる。
コリコリではなくバリバリ。
レバもあんなに大きいのに食べやすい。
やっぱりこういうの食べてこその宇ち多"だなあ。
よかった、勇気を出して。
大事なのはすこしの勇気だな。恋も仕事も宇ち多"も。
隣のお客さん帰った。
俺も出るか。外には大勢並んでる。
もう一杯だけ梅割りを飲んでね。
たしかここは飲んでいいの3杯までだったはず。
いろいろ慣れないから借りてきた猫のように飲んでるよ。
ニャー
でも、前も思ったけど、この店じつは接客がすばらしい。
店員さん、みんな気を使ってくれる。
注文の仕方が複雑だけどこわい店じゃない。
だから愛されるんだね。
ちょうど千円。
来てよかった。前より好きになった。
熱狂的なファンがいるのも頷ける。
よし、次行こう。
※家に帰って落ち着いて調べてみたら、梅割りは5杯半までオッケーのようです。そして生はどれも1種類ずつを二本の組み合わせで注文できるみたいですね。なるほどー。