あの坂をのぼれば、海が見える。
この坂をくだれば、野毛に行ける。
おじさんは、さっきから歩いていた。
ときおり秋風の吹く夜道である。
野毛だ!
おじさんは、階段を駆け上がった。
だがホッピー仙人は、満席だった。
2度ドアを開けたが満席だった。
タツノコは、やっていなかった。
この店に入った。
引き寄せられるように。
席に着くと同時に何かをすすめられた。
強く、強く。
私とK氏には、断ることができなかった。
こうしてよくわからないまま注文が決まった。
たしか餃子1.5人前と鳥とビールだった。
戸惑いながらカンパイをした。
よくわからないが、
出される料理はうまかった。
とくに餃子は、うまかった。
どうなっているんだ。
どうなっているんだ。
何もわからないまま、私とK氏は熟女に溺れていった。
どうなっているんだ。
店を出てから数時間の記憶はない。
パラレルワールドだったのかも知れない。
翌朝、妻に確かめると、
「帰ってくるなり、『マオ・ツォートン(毛沢東)』とひと言つぶやき、いびきをかいてその場に寝た」そうだ。
もう一度、行ってみようと思う。